2008/02/16
建築家訪問記 -和歌山の芦辺留美さん-
和歌浦の家

和歌山市に元気な女性の建築家がいる。
和歌山を嫌う理由は何一つないのだが、行く機会が少ない県の一つ
である。その和歌山市の駅から少し遠い和歌浦という所に彼女のアトリ
エ兼住まいができたというので見に行った。
大分前から彼女とは顔見知りだった。家は街道から少し入ったところにあ
った。彼女の家の前と隣りに、建築家作品と判る家が2軒あり、合わせて
3軒が良質な住宅展示場を見るような感じである。その中では彼女の家が
最も見栄えが良かった。
尖がった自己主張もなくまろやかでセンスも良い。引戸を滑らせてシー
ンを変える楽しさもある。大きさも私には好ましく、エントランスの少しの
複雑さを除けば、小住宅として完成度は高かった。
この時、私は2軒の住宅の撮影で西に向った。1軒は芦辺邸、もう1軒は
兵庫県芦屋にある山邑邸(設計・F.L.ライト/国重文)である。
山邑邸は、ライトらしく過剰な装飾で退屈せず撮れたが、少し胃にもたれた。
リートフェルトのシューレーダー邸(オランダ/世界遺産)やコルビュジェ作
品の方が撮っていて性に合う。芦辺邸と山邑邸のどちらに住みたいかと問
われれば、芦辺邸である。広いガラス戸からの陽光を感じながら、2階の一
角で原稿を書いたり、写真を整理しながら日々をすごしたい家、芦辺邸は
そんな家である。
ファサードを撮っていると、彼女のお父さんが見えた。温厚な感じの方で
ある。この父にしてこの子あり・・と思う。仕事は人柄・・それを大切にする
施主、建築家の結びつきは良質の家を生む。
芦辺さんに会えばそう思うはずである。

写真の作品紹介
設計事務所をもっと身近に、ひとが集う家、町に開く家をコンセプトに
造られた家である。前面道路から木製ルーバーを通して、内部の様子
がうかがえる。内土間を上がってすぐは、住居としてのDK兼打合せ
コーナー。引き戸や障子を使い、緩やかに空間を仕切れるようにして
プライバシーを保てるようにされている。リビングは吹き抜けていて、
アトリエと寝室のある2階へは空間に取り込まれるようにオープンな
階段で上がる。

芦辺留美さんの事務所 アリス設計工房 和歌山市和歌浦東
連絡先 TEL:073-448-5721