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昔町百景 -第22回-

 「勝沼」
     
      葡萄の里に残るもの                 山梨県甲州市勝沼   
      katumuma
   
 
       勝沼は甲州街道の宿場町である。葡萄の産地として名高い。町の
      パンフレットは葡萄ばかりで、町の歴史については書かれていない。
      僅かな街道遺産など人を呼べないということなのだろう。歴史に関し
      ては、葡萄伝説が記されている。養老2年(718)に、日川の畔りで
      修行する行基の眼前に薬師如来が現れた。感動した行基はその姿
      を木で刻み、大善寺に安置、法薬とされていた葡萄の栽培方法をこ
      の地の人々に伝えたと書かれていた。その大善寺は甲州市の東京
      寄りの旧大和村の高台にある。茅葺の本堂は国宝、薬師三尊像、
      十二神将など多くの国重文の仏像を有する関東でも有数の名刹であ
      る。 勝沼から車で数分だから、ここは是非訪れるべきである。
        甲州街道は、日本の五街道の中では最も整備の遅れた道であった。
      宿場はどこもスケールはなく、 鄙びたといったほうが良いような田舎
      宿が多かったようだ。勝沼宿は鳥沢宿と共に古い建物が残っている。
      連子格子の美しい商家、なまこ壁の蔵が点在する上町辺りから役場
      前交差点辺りまでの、 ほんの僅かな間だけが見所で後は見栄えの
      する風景はない。 その中見栄えする中に「旧田中銀行(国登録文化
      財)」がある。 建物を手掛けたのは、甲府の睦沢学校(国重文)も造っ
      た棟梁・松木輝殷。松木が和紙に書いた設計図が残されている。
      建物は明治30年に勝沼郵便電信局舎として建てられ、明治35年ま
      で機能した。大正9年に田中薫作らが中心となって田中銀行が設立
      され、その社屋として改修、転用された。 裏庭にレンガ蔵、繭蔵、米
      蔵も残されている。葡萄だけが勝沼ではないのである。
        甲州市は大善寺の他にも恵林寺、放光寺、雲峰寺など名刹が多い。
      俳聖・芭蕉も勝沼を訪れて次の句が伝わる。
             「勝沼や 馬子も葡萄を 喰いながら」
      本当に芭蕉作なら拙い句である。


                                   :atelier M5 Ki


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