2007/12/01
昔町百景 -集落を歩く-
「奈良町」身代わり猿の揺れる町 奈良県奈良市

今は、行政上の町名に奈良町の記載はない。元興寺を中心とした一帯を奈
良町と呼んでいる。奈良市の東部に位置する奈良町は、首都が平安京(京都)
に遷都する前の首都・平城京(奈良)に起源する町である。中世には、東大寺、
興福寺、春日大社などの社寺の町として発達し、近世には晒、墨、一刀彫など
産業の町として発展した。奈良市は、古都のイメージが強い割には伝統的家並
みの連なりがない。今となっては奈良町は貴重な存在となった。
元興寺(世界遺産)の周辺に古い家並みが多く集まっている。奈良町の町屋
は奥に長い鰻の寝床である。通りから奥に、店の間、中の間、奥の間と商空間
から住空間に部屋が並んでいる。この様子は、公開されている「奈良町格子の
家」で見ることができる。
町を歩いていると、民家の軒に赤や白のお守りが下がっているのを見かける。
これは「庚申さん=おさる」と呼ばれるもので、疫病除けのお守りである。庚申
さんは、文武天皇の時代に疫病が流行した折、ある日、青面金剛が現れて疫
病を退治した。この日が「庚申の年、庚申の月、庚申の日」であった。また、疫
病を持ってくる「三尸(さんし)の虫」は猿が大嫌いだったという。この「おさる」は、
飛騨などでも見られる。庚申さんが軒に揺れる奈良町を歩いていると、不思議
なほどに気持ちが落ち着く。それは、商魂露わな観光町でなく、暮らしの息づく
町だからだろう。

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コメント
元興寺は穴場
2007/12/11 19:50 by 駿 URL 編集